Mr.HOBO
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「べつの解釈」
 僕の知り合いで喫茶店をやっていた人がいて、よく通っていた。
彼の生き方や考え方が好きだったから。ヒゲの隙間からもれてくる
フレーズがとてもオシャレで、「間」がとてもいい。
 いつだったか店に行くと、彼、なぜか不機嫌。いま帰った客に何か言わ
れたらしい、どうやら。
 「ここのコーヒーは札幌で一番うまい、いや北海道で一番、全国一
かもしれない」って。
 「よかったじゃん!」と僕が言うと、彼の不機嫌は更に加速。
 彼いわく、
コーヒーのプロに、「コーヒー煎れるの上手いですね」はないだろう!
ということらしい。
豆がどうで、挽き方がどうだの、温度が、時間が、水が。。。。。
コーヒーが旨いなら、「ウマい!」の一言でいい。黙ってまた来てくれ、
それが客の礼儀だ!ぐらい言って。
 「この店を意識して言ってくれてるんだから、ありがたいじゃん」
と僕がいうと、また彼のヒゲがわなわなと震え出す。
一本気な職人の彼は、その一年後店を閉めてしまった。

 「素晴らしい!」と讃える言葉がある。
僕にとってこの言葉は「グレート」とか「ブラボー」とか、
そんなたぐいの大好きな言葉だ。
作者の「意」を無視して、解ったようにふるまう解説者。
イメージしたり、感じたり、ふるえるような想いは、一言で言い切るのは
ちょっと乱暴だ。作者の想いが100パー正しい形で読者に伝わったとしたら、
その作品は歩き出すことのできない薄っぺらなもののような気がして
ならない。読者が自分の生き方とだぶらせ、その人なりの解釈をするから
奥深い。どんな形にでも変化し、成長できる「言葉」って素晴らしい!

 この前、 久々に彼の店の前を歩いてみた。
鍵のかかった店のドアに「貸し店舗」と書いた不動産屋の貼り紙があった。
もしもあの時、客の言葉を笑って流せる彼の「べつの解釈」
があったなら、今日もあの分厚いカウンターで、彼の煎れたコーヒーを
飲むことができたのだろうか?


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